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はじめてのエステートプラン:家族と財産を守る第一歩
12.04.2025 | ブログ

将来の財産管理や遺産分配について考えることは、少し大変に感じるかもしれません。
特に「リビングトラスト (Living Trust)」や「遺言書 (Will)」といった法律用語が出てくると、つい身構えてしまう方も多いでしょう。
しかし、リビングトラストや遺言書の作成は、ご家族の安心や財産の保護のためにとても重要なステップです。もしも何も準備をしていないと、残されたご家族が、裁判所を通した、複雑な手続きを避けられなくなってしまうかもしれません。
プロベート (検認手続き) とは?
カリフォルニア州を含む米国の多くの州では、故人の保有する不動産が 750,000ドル以上、またはそれ以外の個人資産が 208,850ドル (2025年4月時点) を超える場合、親子間の単純な相続でも、相続人が遺産を受け取る前に裁判所での検認手続き (Probate) を行うことが義務付けられています。「プロベート」とは裁判所の監査を通して行われる遺産相続手続きで、日本にはないシステムです。戸籍で相続人を確認することができないアメリカでは、一定額以上の資産がある場合、この裁判所の検認手続き(プロベート)を経て遺産相続手続きをすることが法律で定められています。このプロベートは1年以上を要する手続き期間と多額の費用がかかるため、リビングトラストを含めたエステートプランを準備しておくことが非常に重要になります。
エステートプランとは?
エステートプランとは、自分の希望通りに資産や権利を家族や指定した人に引き継ぐための法的書類のセットです。複数の書類が連携して、スムーズに資産を管理・分配できるように設計されます。エステートプランには、主に次の4つが含まれています。
リビングトラスト (Living Trust)
エステートプランの中心となるのがリビングトラストです。
トラストの中では次のような内容を定めます。
- 遺産を受け取る受益者
- 受託者のために遺産を管理・運用する受託者 (管財人)
- 遺産分割の具体的な方法(受益者が遺産を受け取る年齢や割合)
トラストを作成し、保有資産をトラスト名義にすることで、検認手続き (プロベート) を避けることが可能になります。
包括的遺言書
(Last Will and Testament)
遺言書は作成者が亡くなった後に効力を持つ書類です。主に以下の内容を定めます。
- 未成年後見人の指定
- 埋葬方法の希望
- トラストに移行されていない財産の補完
日本の遺言とは異なり、遺言書はリビングトラストを補完する役割を持つ書類です。ただし、遺言書ではプロベートを避けることができません。そのため、希望通りに資産を分配したい場合は、リビングトラストとの併用が一般的です。
金銭管理に関する委任状
(Financial Power of Attorney)
委任状は、作成者の代わりに財産管理を行う権限を代理人に委ねるための書類です。即時有効とするか、意思能力を失った場合に限って有効にするかを選択することが可能です。
医療看護に関する委任状
(Advanced Health Care Directive)
医療看護指示書では、作成者が意思能力を失った場合に、医療行為に関する選択や決定をする代理人を指名します。
各委任状は、作成者の死亡と同時に効力を失います。
まずは全体像を知ることから
エステートプランは「自分のため」であると同時に「ご家族のため」の準備です。遺産分割の方法には様々な選択肢があり、ご家族構成や資産の内容によって、最適なものを選ぶことができます。
最初のステップとして、以下のようなポイントから考えてみましょう。
- 家族を守るために今からできる準備を始める
- 遺言書とトラストの違いを理解する
- 受託者、受益者や後見人、代理人の候補者について検討する
少しずつ整理を進めるだけでも、将来に向けて大きな安心につながります。あなたの想いと家族を守る第一歩としてエステートプランの作成を検討してみませんか?